“アジア経済の新星”ミャンマーの可能性と課題(上)

執筆者:深沢淳一 2012年8月30日

 目の前の光景に、キツネにつままれているような不思議な違和感を抱いた。アンコールワット遺跡観光の拠点として知られるカンボジア北西部のシエムレアプ。7月13日の夕暮れ時、クリントン米国務長官は旧知の友を出迎えるように、リゾートホテルでミャンマーのテイン・セイン大統領とにこやかに握手を交わし、記者団の撮影用に約5分間も親密に語り合った。プノンペンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に出席した長官は専用機でシエムレアプに飛び、大統領もミャンマーの首都ネピドーから特別機で駆けつけた。長官は「わざわざお越し頂いてありがとうございます」と謝意を述べ、こう続けた。「明日、貴国に米国を代表する企業団を派遣します」――。

先頭グループを走る日本とタイ

現時点では日本も健闘している(来日したテイン・セイン大統領=右=と野田首相)(c)時事
現時点では日本も健闘している(来日したテイン・セイン大統領=右=と野田首相)(c)時事

 軍事政権時代は未開拓状態だったミャンマー市場を目指して、欧米や日本、東南アジア各国は、官民挙げて先陣争いを演じている。クリントン長官とテイン・セイン大統領の会談は昨年末にミャンマーの首都ネピドーで行なわれて以来2回目だったが、民主化改革の「本気度」を慎重に見極める目的でミャンマーを訪問した前回とは打って変わり、長官の狙いは市場開拓と米国の利益獲得だった。  米政府は会談のタイミングに合わせて、経済制裁緩和に基づく投資分野などの具体的な解禁措置を発表した。そして会談の翌日には、ゼネラル・エレクトリック(GE)グループや建設機械のキャタピラー、国際石油資本(メジャー)のシェブロンなど米国の大企業37社の代表がヤンゴンの国際空港に降り立った。  豊富な天然ガスや鉱物資源、東南アジアで最低レベルの安価な労働力、約6000万人の内需市場、巨大な中国とインドに隣接した地勢的メリット……。投資先としてのミャンマーの魅力は数多く、各国はそれぞれの狙いで市場を押さえようとしている。その中でも日本勢はタイとともに先頭グループを走っており、現時点では健闘している。

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