経済の頭で考えたこと (52)

「歴史からの意趣返し」としての領土問題

7月3日、北方領土・国後島の港に立つロシアのメドベージェフ首相 (C)EPA=時事
7月3日、北方領土・国後島の港に立つロシアのメドベージェフ首相 (C)EPA=時事

 内憂外患こもごも至る、という状況が日本に及んでいる。内憂についてはすでに日本の現代史の骨格になった感があるが、ロシア、韓国、中国との領土紛争についていえば、外交についても党内合意を欠いたまま政権についた民主党による統治の時代になって噴出することとなった。日米安保体制のもっていた客観的機能について無理解であった鳩山由紀夫首相時代に生じた日米間の亀裂は、東アジア情勢の中での日本の立ち位置を揺るがすに至ったといってよい。歴史的な再学習をわれわれは迫られているというべきではないか。何しろわれわれは日米基軸を揺るがすことによって、20世紀の歴史からの意趣返しを封じ込める措置をいったん解除してしまったのだから。  メドベージェフ首相の度重なる北方領土訪問、李明博大統領の竹島訪問、香港からの民間抗議船による尖閣諸島上陸と、わが国の領土問題への先制攻撃が相次いだ。当然のことながら日本ではこうした理不尽な行為に対する抗議の声の急速な高まりがみられる。しかし最大の問題は、露・韓・中の3カ国において、こうした日本の事情への理解者が現れないことだ。またこの3カ国政府の関係者の間には暗黙の対日協同対応の雰囲気さえ感じられるとの見方まである。われわれはどこで意趣返しの対象となったのか。なぜ3カ国に暗黙の合意があるようにみえるのか。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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