パンサック本格始動で動き出すタイの高速鉄道計画

執筆者:樋泉克夫 2012年9月11日
エリア: アジア

 7月3日のタイ閣議でインラック首相顧問団主席に任命されたパンサック・ウィンヤラット(1943年生まれ)が、どうやら本格始動をはじめたようだ。いまは“海外亡命中”のタクシン元首相が政界進出を画策していた90年代半ばから06年9月のクーデターによって政界から追放されるまでの10余年、ブレーンとしてタクシン政治の脚本家兼演出家であったことは、既に報告しておいた(2012年7月13日「“実力者”パンサックの復活で視野に入った『タクシン帰国』」)。

 前アピシット民主党連立政権の提案したタイ国内の高速鉄道計画は中国との合弁で順調に滑り出すかと思われていたが、反タクシン派対タクシン派の激しい政争に巻き込まれ、その進捗情況は捗々しいものではなかった。1年前の政権交代でタクシン元首相実妹のインラックが首相に就任したことで計画は一気に加速するとも思われたが、政権発足直後に発生した50年来の大洪水に足を掬われた形で、いわば手付かずのまま1年が経過した。野党に回ったとはいえ、民主党は3月に代表団を訪中させ、中国共産党との連携強化を打ち出す一方、高速鉄道建設計画に就いては早期着工で中国側と合意している。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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