ロシアのお陰で「領土3正面作戦」を回避

執筆者:名越健郎 2012年9月14日
エリア: ヨーロッパ

 外交、安保上では、敵対勢力を1度に2カ所抱える2正面作戦は避けるのが鉄則だ。米国防総省も軍事戦略で、湾岸と朝鮮半島の有事2正面作戦は困難と結論付けた。まして3勢力と敵対する3正面作戦は悪夢に他ならない。

 この夏、尖閣と竹島をめぐる中韓両国の領土圧力で、日本は領土問題の2正面作戦を強いられたが、これにロシアが悪乗りし、北方領土で日本に圧力をかけていたら、3正面作戦を強いられるところだった。中国の戴秉国・国務委員(外交担当)は8月、モスクワでの中露安全保障会議で、「主権や領土の一体性で互いに支持すべきだ」と尖閣と北方領土での共闘を訴えた。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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