「色の革命」は褪せたのか――旧共産圏の「民主化」と「親欧米」

執筆者:国末憲人 2012年10月26日
エリア: ヨーロッパ
支持を失ったサアカシュヴィリ大統領(左)と選挙に勝利したイヴァニシュヴィリ新首相(c)AFP=時事
支持を失ったサアカシュヴィリ大統領(左)と選挙に勝利したイヴァニシュヴィリ新首相(c)AFP=時事

 旧ソ連の小国グルジアで起きた今回の政権交代は、2000年代前半に旧共産圏諸国を席巻した民主化運動の終焉を意味しているのだろうか。  2000年、セルビアの独裁者ミロシェヴィッチ大統領を市民運動が退陣に追い込んだのが、一連の民主化の幕開けだった。続いて2003年、グルジアで市民がバラの花を手に集まり、腐敗の著しいシェワルナゼ政権を倒す「バラ革命」が起きた。2004年にはウクライナで「オレンジ革命」が起き、オレンジ色をシンボルカラーに抱いたユーシェンコ民主政権が誕生した。これらの無血革命は「色の革命」「花の革命」と総称され、2005年キルギスの「チューリップ革命」から、2011年チュニジアでの「ジャスミン革命」、さらにはアラブ各国での独裁終結へとつながる大きな流れを築いた。  その熱気は今、地元ですっかり冷めたように見える。ウクライナでは2010年、オレンジ革命で打倒したはずの親露派ヤヌコヴィッチ氏が大統領に当選し、大幅な揺り戻しが起きている。セルビアでは今年5月、ミロシェヴィッチ元大統領下で副首相を務めた右翼のニコリッチ氏が大統領に当選した。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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