ユーロ危機は終わっていない――EUを揺さぶる地中海の小島

執筆者:加瀬友一 2012年11月1日
エリア: ヨーロッパ
EUがキプロスを見放せない理由とは?
(c)EPA=時事
EUがキプロスを見放せない理由とは? (c)EPA=時事

 ユーロ危機は収束に向かい始めたのだろうか。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が国債の無制限買い入れプログラム(OMT)を発表したのが9月6日。その大胆な決断を追いかけるように、欧州連合(EU)は10月18日からブリュッセルで開いたEU首脳会議で、ユーロ圏の銀行監督を一元化する合意をまとめた。  金融市場の参加者は、流動性の危機がとりあえず去り、不良債権を抱えた銀行への資本注入にも道が開けたと判断したようだ。今はイタリアやスペインの長期金利は一応の安定を取り戻している。  ユーロ圏最大の不安材料だったイタリアは、政府の債務残高が大きいとはいっても基礎的財政収支(プライマリーバランス)は黒字である。流動性の危機が解消されて信用不安が薄まれば、底なしの泥沼に転落せずに立ち直れるはずだ。もう1つの火種であるスペインも、バブル崩壊に伴う銀行の不良債権の処理に目処がつけば、なんとか救われるだろう。

未解決のままの債務問題

 これでひと安心……で、あるはずがない。何か忘れていないだろうか。もともと「ユーロ危機」という名の爆弾の導火線となっていたのはギリシャであったはずだ。そのギリシャの債務問題は、ほとんど手つかずのまま横たわっている。
 さらに見逃してはならないのが、ギリシャと経済が一体化している地中海の小国キプロスである。ユーロの加盟国でもあるキプロスは、輪番制で現在はEU議長国という重責を担っているが、国内経済はギリシャ同様に破綻状態だ。地中海の東の端に位置する両国の問題は、最近はニュースの表舞台にあまり登場しなくなったが、実は政治集合体としてのEUの基盤を、水面下で激しく揺り動かしている。
「ユーロ圏の落第生」と呼ばれるギリシャとキプロスが単一通貨の仲間から離脱すれば、残ったユーロ圏本体の経済は安泰となるだろう。そんな意見がエコノミストから出ることがある。だが現実はそう簡単ではない。
 ECB理事会のメンバーであるデメトリアデス・キプロス中銀総裁は10月22日、メディアに対して「キプロスが他国よりも不利に扱われるべきではない」と語った。イタリアやスペインと同じように手厚い援助をせよと、ドイツ、フランスをはじめとするユーロ圏の主要国にクギを刺す発言だ。

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