「質的な変化」を遂げつつある米韓同盟(下)

平井久志
執筆者:平井久志 2012年11月7日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米 朝鮮半島

 ミサイル協議を終えた韓国の次のターゲットは米韓原子力協定の改定交渉だ。
 現在の米韓原子力協定は2014年3月19日に満期を迎える。
 韓国内では北朝鮮の核脅威が増大するにつれて、韓国も核武装をすべきだという「核主権論」が頭をもたげている。
 与党セヌリ党の 鄭夢準 (チョン・モンジュン)議員は今年6月、ソウルでの討論会で北朝鮮の核開発に対抗するため「韓国も核保有能力を持つべきだ」との持論を展開し、日本について「大量のプルトニウムを保有しており、数千個の核弾頭をつくれる。2週間で核武装できる」と警戒感を示した。さらに鄭議員は「交渉カードとして戦術核を韓国に配備するのも1つの方法だ」と述べ、在韓米軍に戦術核を再配備することを検討すべきだとした。
 昨年2月の韓国国会での代表質問では、鄭議員を含めて5議員が韓国の核保有論や在韓米軍への戦術核再配備などに言及した。

「原子力協定」改定交渉

 韓国政府はこうした主張を「現実性がない」と否定している。韓国が、米国の「核の傘」の中にいる状況で、米国が韓国の核武装を許すわけもない。また、盧泰愚(ノ・テウ)政権時代の1991年に在韓米軍から核兵器を撤収した米軍が再び戦術核を再配備する可能性も高くない。
 こうした中、韓国政府は「米韓原子力協定」の改定交渉で使用済み核燃料の再処理と低濃縮ウランの生産を認めるよう米国側に要求しているが、米国側はこれを拒否している状況だ。
 韓国メディアの報道によると、千英宇(チョン・ヨンウ)青瓦台(大統領官邸)外交安保首席秘書官は10月19日、ソウル市内で行なわれた学術会議での基調演説で「道理から言えば、ウラン濃縮や使用済み核燃料再処理など、核拡散防止条約(NPT)4条で保障された平和的な核の利用権を(韓国に)認めることに反論する根拠は、米国にもない」と語った。
 さらに千首席秘書官は「そうした(平和的な核の利用に関する)権利を得られれば、権利を行使する方法については韓国なりの考えがあるため、そういう方向で改定しようと米国側に要求している」とし、「韓米原子力協定が望み通り改定されない場合、代案としてどういうものがあるかについても考えなければならない」と述べた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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