ロシア国防相解任で政権基盤に陰り

執筆者:名越健郎 2012年11月8日
エリア: ヨーロッパ

 ロシアのプーチン大統領が11月6日、不動産汚職疑惑に絡んだセルジュコフ国防相を唐突に解任したことは、従来のプーチン人事からすれば異例の展開となった。軍や官僚の汚職腐敗、メディアへの情報リーク、権力闘争など、プーチン大統領の政権統率力が弱まりつつある印象を受ける。

 セルジュコフ国防相はサンクトペテルブルクで家具売買をしていたビジネスマン出身で、軍歴がない。大統領に近いズブコフ前第一副首相の女婿。2007年に国防相に抜擢された後、プーチン路線に沿って、兵力削減や機動的な軍への再編に大ナタを振るい、国防予算大幅増を背景に、軍改革は比較的スムースに進んでいた。プーチン大統領が、成果を挙げていた身内のサンクト派幹部を更迭したのは初めてだ。同大統領は閣僚をめったに解任せず、いったん任命すると、かなりの裁量権を与えてきた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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