英社買収「原発ビジネス」にのめり込む「日立」の悪癖

執筆者:杜耕次 2012年11月9日
エリア: ヨーロッパ
10月30日、ホライズン社買収を発表する日立製作所の羽生正治・執行役常務 (C)AFP=時事
10月30日、ホライズン社買収を発表する日立製作所の羽生正治・執行役常務 (C)AFP=時事

 日立製作所が原子力発電事業で賭けに出た。10月30日、英国の原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を6億7000万ポンド(約850億円)で買収すると発表。ホライズン社は英国内2カ所で最大6基の原発建設を計画している。東京電力福島第1原発の事故以来、日本国内での原発新設は絶望的となり、受注を内定していたリトアニアでの原発計画も10月の国民投票や議会選挙で見直しが必至の情勢。加えて、パートナーである米ゼネラル・エレクトリック(GE)は原発事業から一段と距離を置き始めており、八方塞がりの中で日立の原発事業撤退の可能性さえ取りざたされ始めた矢先だった。ホライズン社が計画するプロジェクトの総事業費は200億ポンド(約2兆6000億円)。日立にとって乾坤一擲の大型M&A(合併・買収)だが、そのリスクの大きさにアナリストの間では早くも先行きを危惧する見方が広がっている。

ドイツ政府の「脱原発」決定

「今後数十年、数十億ポンドに及ぶ英国への信任投票だ。英国のエネルギー業界の担い手として日立を歓迎する」
 ホライズン社買収が発表された当日、英国首相のデイビッド・キャメロンは賛辞にあふれたコメントを発表した。
 また翌31日の議会で野党にエネルギー政策の不透明さを追及された際にも「きょうはエネルギー政策について話す良き日だ。日立が200億ポンドの投資を決めたのだから」と意気揚がる様子で反論した。キャメロンのはしゃぎぶりから、今回の買収劇が英国政府をいかに安堵させたかを推し測れる。
 ホライズン社はRWE、イーオンというドイツの電力大手2社が2009年に共同出資で設立した。建設から40年以上が経過したイングランド西部にあるオールドベリー原発(出力62万キロワット、2012年2月稼働停止)とウェールズにあるウィルファ原発(98万キロワット、14年9月稼働停止予定)に代わる新たな原発建設を進める事業主体であり、英国政府が昨年6月に発表した原発建設候補地8カ所のうち、すでに2カ所を保有。そこに4-6基の原発を建設、最初の2基は2020年代前半の稼働開始を目指していた。
 ところが、福島事故をきっかけにドイツ政府が昨年6月に脱原発を決定。母国の政策変更を見たRWE、イーオン両社は原発事業縮小方針を決め、今年3月に英国政府に撤退を通告、ホライズン社は売却されることになった。当初、買い手として有力視されたのは中国勢。中国北部が地盤の中国核工業集団と南部に本拠を置く中国広東核電集団でいずれも「中央企業」と呼ばれる北京政府直属の国営企業である。

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