アメリカ衰退論は正しいか――2012年米大統領選が示したもの

執筆者:渡辺靖 2012年11月14日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米
「アメリカン・モデル」の優位性が問われている(再選を果たしたオバマ大統領)(c)AFP=時事
「アメリカン・モデル」の優位性が問われている(再選を果たしたオバマ大統領)(c)AFP=時事

 今回のアメリカ大統領選挙は「盛り上がり」に欠けるとしばしば指摘された。たしかに「初の黒人大統領誕生」といった歴史的な華はなく、ロックコンサートのような熱気に包まれた集会も少なかった。  しかし、アメリカの相対的な「衰退」が指摘される現在、国際社会に与える影響という点では、今回の選挙は前回以上に重要だったように思う。

揺るがないアメリカの優位性

 もちろん、個々の領域を見た場合、アメリカは必ずしも「衰退」しているわけではない。
 他国と比べて国防予算は断トツで、アメリカ以下の十数カ国の予算総額を上回っている。しかも、たとえば北朝鮮以外に同盟国を持たない中国とは違い、アメリカは50以上の同盟関係を有している。技術的な優位も明らかだ。
 経済規模は中国の倍以上、しかも先進国には珍しく労働人口は増加傾向にある。米ドルを基軸通貨としない合理的な理由はほとんど見当たらない。シェールガス革命が進めばエネルギーの中東依存を低減できるばかりか、ガスの一大輸出国となり、地政学的なランドスケープそのものを大きく変容させる可能性もある。
 ソフトパワーという点では、大衆文化はもちろん、高等教育やイノベーションなどの分野でも世界中から優秀な人材を惹き付け続けている。アメリカに対するもっとも辛辣な批判でさえ、実は、アメリカの大学や知識人から発せられている場合も少なくない。   
 しかも、アメリカ衰退論は何ら目新しいものではない。
 1950年代のスプートニク・ショック、70年代のニクソン・ショック、2000年代のITバブル・ショック、そして2008年のリーマン・ショックなどに呼応しながら、およそ20年前後の間隔でアメリカ衰退論は流行っては消えていった。やや元気がなくなると「衰退」と批判され、少し元気を取り戻すと「帝国主義」や「覇権」と批判されるのがアメリカであり、超大国の宿命なのかもしれない。

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執筆者プロフィール
渡辺靖 1967年生まれ。1990年上智大学外国語学部卒業後、1992年ハーバード大学大学院修了、1997年Ph.D.(社会人類学)取得。ケンブリッジ大学、オクスフォード大学、ハーバード大学客員研究員を経て、2006年より現職。専門は文化人類学、文化政策論、アメリカ研究。2005年日本学士院学術奨励賞受賞。著書に『アフター・アメリカ―ボストニアンの軌跡と〈文化の政治学〉』(サントリー学芸賞)、『アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所』、『アメリカン・センター アメリカの国際文化戦略』などがある。今年10月に岩波新書から最新刊『アメリカン・デモクラシーの逆説』が刊行された。
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