米大統領選結果と日本外交の注意点

執筆者:渡部恒雄 2012年11月15日

 オバマ勝利は筆者の予想よりも早く確定した。これはオバマ陣営が接戦州をほとんど取りこぼすことなく着実に勝利したからだが、オバマ陣営の選挙戦略が緻密かつ周到に計画されていたことが、選挙後の米国の様々な検証記事からわかった。また、オバマ大統領の勝利演説の高揚感をみると、一時は落選を覚悟するほどの厳しい選挙であったことも実感できる。接戦州でのマージンは、かなりの僅差であり、選挙運動の仕方や全米での大きな流れ次第では、いくらでも違うシナリオは考えられたからである。

 選挙全体を通じて効果を上げたオバマ陣営の好材料は、やはりGM、クライスラーを救済したという事実と、その恩恵を受けたミシガン、ウィスコンシン、オハイオで、終始優位に戦いを継続していたことだろう。

 選対本部を中西部の中心地、シカゴに置いたことは戦略的な勝利であったと思われる。逆にロムニーの選対本部は、勝ち目のないマサチューセッツに置かずに、ミシガンに置くべきだったと思う。結局、選挙中のスローガン、「GMは生きのこり、ビンラディンは死んだ」というメッセージが、オバマ選対の地上戦の「兵隊」によってよく浸透したのだろう。

 ロムニー候補にとって悔やまれるのは、第1回の討論会で大きな得点を稼ぎながら、その勢いをさらに高めるような、あとに続くキャンペーンがなかったことだ。第2回と第3回では、覚悟を決めたオバマに対し、ロムニー候補の守りの姿勢が目立った。そのような状況においても、ロムニーへの期待と支持はじわりとあがっていた。その流れを止めたのがハリケーン・サンディであった。これはオバマ陣営にとっては「神風」であったし、ロムニー陣営にとっては「オクトーバーサプライズ」(カール・ローブ元ブッシュ大統領次席補佐官)であったといえよう。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄 わたなべ・つねお 東京財団上席研究員。1963年生れ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士号を取得。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係などの研究に携わる。05年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て現職。著書に『「今のアメリカ」がわかる本』など。
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