開発におけるナショナリズムとインターナショナリズム

平野克己
執筆者:平野克己 2012年11月15日
エリア: アフリカ

 開発をめぐる議論にはいくつも、まったく異質なものが含まれている。そのひとつが、ナショナリズムに依拠しているものとインターナショナリズムに依拠しているものの混在である。
 援助国側の「人類の貧困を救え」という議論は国際開発理念に基づいているからインターナショナリズムであり、一方開発途上国のなかでは、ほかの途上国よりも先んじて豊かになりたいというナショナリズムの議論になる。韓国をみるとよくわかるが、開発に成功した国の開発はナショナリズムを原動力にしていたといえる。これが、開発独裁とか「開発主義」とかいわれてきたものだ。

 だから、開発を考えるにあたってはナショナリズムについて知っておくことが重要だ。ナショナリズムを論じた名著としては、なんといってもベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』が挙げられる。この本は実に興味深い問題設定から始まるのだが、そのひとつが「強烈な影響を歴史にもたらしながらナショナリズムをめぐる議論は支離滅裂であり、偉大な思想を生みださなかったのはなぜか」というものである。アンダーソンの慧眼だ。アンダーソンの答えを要約すると、ナショナリズムは常にサブカルチャーを母胎にしているからということになると思うが、現在私が煮込みはじめているアイデアは、社会心理学に材料をえている。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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