インテリジェンス・ナウ
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「機密」を講演で語りPCに取り込んでいた愛人――CIA前長官を追い込む情報続く

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年11月15日
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 デービッド・ペトレアス米中央情報局(CIA)長官(60)の突然の辞任。単なる不倫騒動ではないと思っていたが、案の定、次々と新事実が明るみに出て来た。
 第1に、不倫相手のポーラ・ブロードウェルさん(40)は機密とみられる情報を公開の講演会で喋り、機密文書を自分のパソコン(PC)に取り込んでいた。
 第2に、長官もブロードウェルさんも、自分たちのコミュニケーションのために「Gメール」に個人のアカウントを設定。彼らのアカウントがハッキングされた可能性をFBIは恐れていた。
 第3に、米大使ら4人が死亡したリビアの米領事館襲撃事件では、アフリカ軍司令官や関係者が次々と辞任の動きを示しており、ペトレアス氏にも圧力が迫っていたことだ。

発端は約半年前

 そもそもこの事件、発端は約半年前の5月のこと。ブロードウェルさんが長官の別の女性友達ジル・ケリーさん(37)に「脅迫」めいたeメールを送り始めた。
 困ったケリーさんは友人の連邦捜査局(FBI)捜査官に相談して、捜査が始まった。ところが、メールを送りつけた人物のアカウントは「匿名」で、熟練の捜査官らが綿密に調べた結果、ブロードウェルさんのアカウントと判明した。長官とブロードウェルさんの2人がGメールに開設したアカウントを調べたところ、あからさまな性的な表現があったという。
 長官は偽名でアカウントを開設していた。誰かがこのアカウントに侵入したり、あるいは長官になりすましてメールを送ったりした可能性も疑われたが、結局本人が送信していたことが判明、2人の不倫関係も判明した。
 9月に入り、FBI捜査官はブロードウェルさんを事情聴取したところ、長官との不倫関係を認め、自分のPCを提出した。
 FBIでPCを調べた結果、複数の機密文書を取り込んでいたことが分かった。このため、FBIが長官から事情聴取したが、不倫関係を認めたものの、機密文書は長官が渡したものではない、と否定した。
 それは10月末のことで、米CBSテレビによると、ブロードウェルさんはちょうどそのころ、自身が修士号を取得したデンバー大学で行なった講演の際、質問に答えて、「リビアの米領事館襲撃事件では、CIAが領事館別館に2人のリビア人民兵を拘留しており、襲撃事件は彼らの奪還が目的で起きた」といった趣旨の発言をしたという。
 しかし、この発言が、長官から聞いた事実に基づくものかどうか、といった詳細は不明だ。ただ、7月にも彼女はアスペン研究所での講演で、「私はどんなこと(情報)にもアクセスできるが、リークしたりしないし、私の師匠に迷惑をかけない」と語り、ペトレアス氏から情報を得ているかのような発言をしていたことが分かった。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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