印パ経済協力拡大に水を差す「政治」動向

執筆者:山田剛 2012年12月4日

 スケールや安定度の違いがあるとはいえ、南アジアの二大国であるインドとパキスタンの経済協力に非常に大きな潜在力があることは、両国だけでなく世界のビジネス関係者の一致するところだ。ブラジルとアルゼンチンの関係にもたとえられる印パ間では、セメントや紅茶、石油製品から食料品まで、片方の需給がひっ迫した時のショートカバー輸出入による相互補完はもちろん、製造業の現場では部品輸入→相手国での組み立てといった分業体制も選択肢として検討されている。昨年来、印パ両国は貿易や投資の拡大を目指して相互のハードルを下げ始めたが、こうした経済協力の機運に最近の政治動向が微妙な影を落としている。

 ムンバイ同時テロなどによる幾たびの中断や停滞を経た紆余曲折の末、パキスタンは2011年10月、長年の懸案だったインドに対する最恵国待遇(MFN)供与を閣議決定、貿易品目に対する規制をこれまでのポジティブ・リスト方式(明記された品目のみ輸出入を認める)から、より自由度の高いネガティブ・リスト方式(明記された品目以外は自由に輸出入できる)に改め、今年3月に1209品目からなる同リストを発表した。

 ネガティブ・リスト導入によって、これまで中東・ドバイなどを経由した迂回輸出、あるいは密輸などでやり取りしていた品目が印パ間で堂々と取引できるようになり、両国企業へのメリットも期待されていたが、出てきたリストには案の定というか、インド側に比較優位がある繊維製品、自動車部品、化学品などが軒並み「禁輸品目」として記載されていた。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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