フランス富裕税逃れ「ドパルデューよ、お前もか」

執筆者:国末憲人 2012年12月19日
タグ: フランス
エリア: ヨーロッパ

 フランスのオランド政権が導入を計画している富裕税を逃れようと、税率の低い近隣諸国に住所を移す金持ちたちが後を絶たない。高級ブランド世界最大手のグループ「LVMH」(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)の総帥ベルナール・アルノー氏がベルギー国籍取得を目指して顰蹙を買ったのは、9月21日の本欄「『ブランドの帝王』ベルギー国籍申請の怪しさ」で報告したが、今度はこれと比べものにならない大物だ。国民的俳優ジェラール・ドパルデュー氏がベルギーに引っ越ししたというのである。

 その引っ越し先は、ネシャンという小さな村である。フランス国境からわずか1キロのところに位置し、仏北部の大都市ルーベと近接している。村で話されているのはフランス語であり、欧州内の自由な往来を定めたシェンゲン協定に両国とも参加しているから、フランス側とネシャン村との間には、検問も税関もない。お隣に出かけるのと、何ら変わらない。

カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top