グローバル企業を目指す「関西ペイント」の果敢な挑戦

平野克己
執筆者:平野克己 2012年12月28日
エリア: アフリカ

 今年最後に元気の出る話題をひとつ。

 先日、とある会合で、関西ペイント株式会社の石野博専務からお話を伺うことができた。同社は2011年に、南アフリカ最大手の塗料・塗装会社フリーワールド・コーティングスの買収に成功した。

 このM&Aは敵対的買収であった。フリーワールド・コーティングス社ではマネージメント・バイアウト(MBO)が成立する直前だった。MBOを指揮していた当時のCEOは政界とのつながりも持つ人物だった。関西ペイントはこれに対して、新しい経営方針を提示することで戦局を開いたのである。

 南アフリカ公務員の年金を運用するPICは巨大な政府系ファンドだが、PICはフリーワールド・コーティングス株の18%を有していた。関西ペイントはPICに対して「われわれが経営権を握れば、アフリカをはじめ国外に積極展開する」意思を伝えた。このことがPICを動かし、MBO案は白紙に戻って株式の公開買付けが始まり、関西ペイントが90%以上を取得したのである。

 関西ペイントは現在業界で世界第8位だが、首位をとりにいくと決めている。日本の自動車メーカーの海外進出とともに早くから国外展開してきたが、今後は自動車塗装から業態の幅を広げ、グローバル企業となって世界中に展開する方針なのである。社としてこのような意思を固めているからこそ、経験のないアフリカでも強気の経営方針を堂々と打ちだせたのだろう。「トップにたつ」という目標設定の仕方は、南アフリカの企業、たとえば資源メジャー最大手BHPビリトンの前身であるジェンコー社や、ビール業界世界第2位のSABミラーの前身南アフリカ醸造会社(SAB)などを思い起こさせる。いずれも勇猛果敢なM&Aで世界市場に殴り込みをかけてきた企業だ。日本の関西ペイントは、南アフリカ人CEOよりも南アフリカ的な経営思想を主張することで勝利したわけだ。トヨタ自動車が南アフリカ工場への大規模追加投資を決めたのも、世界最大の自動車企業になることを決意した直後であったように思う。ナンバーワンをめざしている企業の視野にはアフリカが見えてくる。それにしても、勝負を決めたのが日本ブランドでもカネの力でもなく、経営戦略だったというのがすごい。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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