一石三鳥狙うインド「補助金直接払い」制度がスタート

執筆者:山田剛 2012年12月31日

 3億人とも5億人ともいわれる貧困層人口に対する政治的な配慮から、インドでは歳出の約13%、1兆9000億ルピー(2012年度予算ベース、約3兆円、前年度予算比32%増)もの補助金を計上している。しかもこの補助金、毎年のように予算に比べて実際の支出額が大きく増えてしまうのが特徴。12年度(13年3月期)の場合はすでに当初予算比1.5倍に膨れ上がるなど、巨額財政赤字の主因の一つとなっている。

 補助金の対象となる三大アイテムは、コメや麦などの食糧、約7億人にのぼる農民にとって欠かせない肥料、そして軽油、LPガス、灯油などの燃料である。しかし、故ラジブ・ガンディー元首相(現与党国民会議派総裁ソニア・ガンディー氏の夫で、インディラ・ガンディー元首相の長男)がいみじくも指摘したように、ガバナンスの低さや技術的な問題、そして汚職や不正などで「本当に(補助金を)必要としている人の元には全体の15%しか届いていない」と言われるのが現状だ。

 実際、軽油などのように公定販売価格を下げるだけでは、富裕層も同じ条件で買えるので、まったく効果的ではない。国が買い上げた穀物を逆ザヤの格安で供給する食糧配給制度は、備蓄段階でその多くを腐敗させてしまったり、横流しなどの不正が相次ぎ、効率性にはかねて大きな疑問の声が出ていた。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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