経済の頭で考えたこと (55)

「国際社会の新たな秩序化」としてのTPP

 安倍晋三新首相は、総選挙に臨むに当って、日本の歴史的位相をどうとらえるのか、という論点提示にこだわった。選挙に大勝した後は、尖閣問題や竹島・従軍慰安婦問題についての積極的な発言は控えているが、安倍首相のこれらの問題についての「こだわり」が、我が国の外交をどこに導くかについては、これからも常に注視する必要がある。

 東アジアの隣国でも、2013年は新指導者が自らの政治基盤の確立をめざして模索を開始する。中国の習近平総書記は、「中華民族の偉大な復興」という言葉を自国民に対する呼びかけとしている。尖閣諸島を対日カードとして仕立てることへのこだわりは、おそらく、今回の歴史的局面の最後の最後まで持続する、と覚悟すべきだろう。中国共産党の国民党からの奪権は、抗日戦争を組織化することによって可能になったという歴史的事実もある。こうしたなかで安倍政権は中国と同じ歴史の地平に立ち、中国と対峙し続けるのか。

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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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