行き先のない旅
行き先のない旅(94)

旧ユーゴ「長きにわたる反目」を解きほぐす演奏会

大野ゆり子
執筆者:大野ゆり子 2013年1月24日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 クロアチアから友人が久しぶりに訪ねて来た。20数年前にザグレブに住んでいたころに、毎日のように一緒に食事をし、お酒を飲んだ仲間たちだ。友人たちの暮らしぶりも長いトンネルを抜け、自信と希望に溢れている感じがした。

 

そりが合わない「異母兄弟」

 地中海を挟んでイタリアとちょうど反対側の海岸線を持ち、風光明媚なクロアチア観光は日本でも人気だそうで、ネット検索でも200万近いヒット数がある。首都ザグレブはウィーンにちょっと似た町並みで、地中海で取れた魚介が市場で安く手に入り、トルココーヒーの香りが町中に漂う美しい都市だ。

 私が初めてこの町に来たのは、1991年の6月、ちょうどクロアチアがユーゴスラビア連邦政府に対して独立を宣言したときだった。当時は、国中がナショナリスティックな祝賀ムードに包まれていた。クロアチアとセルビアは、言ってみれば、育ってきた環境が違うので、そりが合わない異母兄弟のような関係にある。

 宗教的には共にキリスト教ながら、セルビアはセルビア正教でクロアチアはカトリック。セルビア語とクロアチア語は単語の発音や表現が似ていて、極めて近い言葉でありながら、表記法はクロアチア語がラテン文字、セルビア語がキリル文字。歴史的にもハプスブルク文化の影響下にあり、西側に近いクロアチアと、400年間オスマントルコ帝国の支配下にあったセルビアは「国民性があまりにも違う」と多くのクロアチア人が言っていた。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
大野ゆり子
大野ゆり子 エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順