イナメナスの悲劇:アラブの春がアフリカにもたらしたもの

平野克己
執筆者:平野克己 2013年1月24日

 アルジェリアのイナメナスでおきた天然ガス施設襲撃事件は、日本のアフリカビジネス史上、もしかしたら海外ビジネス史上においても、最悪の事態となった。最初に殺害されたのは日揮の日本人社員であるらしく、体に爆弾をまかれて盾にされていた日本人もいるという。現在判明しているかぎりでは、もっとも死亡者が多いのは日本人である。私のゼミの先輩にも日揮に入ってアルジェリアで働いていた人がいた。日揮は、アルジェリアのためにもっとも永きにわたって、大きな貢献をなしてきた日本企業だ。その膏血がテロの犠牲になった。なんということだろう。

 一昨日までロンドンにいた。ロンドンは大雪で、テレビでは荒天絡みの国内ニュースと、そしてアルジェリアのことが繰り返し流されていた。事態の全容はまだわからないが情報は怒涛のように流れている。すでにこの欄でも白戸さんが、首謀者と思しきベルモフタールのことを伝えてくれている。

 まだ確定的なことはいえないが、襲撃団はおそらくマリからきたのではないか。たとえそうでないとしても、マリでおこっていることとの関連は明らかだ。「アルカイダ解放区」と化したマリ北部にフランス軍が空爆したのが1月11日、進軍を開始したのが16日のことである。昨年4月にマリ北部が独立を宣言し、その後ここはアルカイダ系組織の支配下に落ちた。その結果、当面はどこも干渉できない広大な「アルカイダ国」ができた。そこに3000人から4000人の兵士が集結し、国際介入に備えて要塞化がはかられていると伝えられていた。「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織」(AQIM)は、もとをたどればアルジェリア人の組織だ。アルジェリアのブーテフリカ政権は彼らの仇敵である。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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