インテリジェンス・ナウ
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“陰謀の名手・ローブ”の大統領選「情報術」に唖然

春名幹男
執筆者:春名幹男 2004年10月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

「ウィリー・ホートンの再来だよ」 八月末来日した、ゴア前米副大統領の元アドバイザーが半ばあきれ顔でつぶやいた。同じ時期に東京を訪れた元米政府高官は「汚い中傷合戦になると、民主党は弱いから」とブッシュ勝利を予想した。 二人が言うのは、ケリー民主党大統領候補の軍歴を中傷するテレビコマーシャルのことである。「ウィリー・ホートン」はアメリカ政治では極めて有名な人名だ。ホートン本人が政治家というわけではない。凶悪なレイプ・殺人犯ホートンはただ、テレビコマーシャルに利用されただけだった。 一九八八年の大統領選挙。ブッシュ現大統領の父、ブッシュ候補(当時副大統領)は民主党のデュカキス候補(同マサチューセッツ州知事)に最大一六ポイントもの差をつけられて苦戦していた。その差を一気に追い抜き、大勝した、代表的なコマーシャルとして、ホートンは有名なのだ。 ホートンは、マサチューセッツ州の“受刑者週末帰宅制度”を利用して行方をくらまし、逃亡中にレイプを犯した。テレビ画面にはホートンの顔写真と刑務所の回転ドアから週末に多くの囚人が出て行くシーン。そして「多くがなお行方不明です」という文字が繰り返し流された。歴史的な「最も怖い選挙広告」(ニューヨーク・タイムズ紙)だ。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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