「外交重視」を示す第2期オバマ政権の大統領首席補佐官人事

執筆者:足立正彦 2013年1月28日
エリア: 北米

 バラク・オバマ大統領は1月25日、既に次期財務長官に指名したジェイコブ・ルーの後任の大統領首席補佐官に、デニス・マクドノー国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を指名した。アル・ゴア元副大統領やジョゼフ・バイデン副大統領の副大統領首席補佐官を務めたロン・クラインやトム・ダシュル元民主党上院院内総務(サウスダコタ州)、あるいは、トーマス・ナイデス国務副長官らの名前も次期大統領首席補佐官の候補として浮上していた。だが、オバマ大統領が最終的に指名したのは同大統領に極めて近いマクドノーであった。

 マクドノーは第1期オバマ政権発足時から数えると、ラーム・エマニュエル、ピート・ラウス(代行)、ウィリアム・デイリー、そして、ルーに次いで5人目の大統領首席補佐官となる。マクドノー以前にオバマ大統領を支えてきた4人の大統領首席補佐官はいずれも「内政重視」の布陣であった。第1期オバマ政権発足時からシカゴ市長選に出馬するまでの1年9カ月余り大統領首席補佐官の要職にあったエマニュエルは、下院民主党指導部からの抜擢であった。クリントン政権では大統領補佐官(政治担当)や大統領上級顧問(政策・戦略担当)として議会対策にも優れていたエマニュエルは、オバマ政権発足翌月に成立した大型景気刺激策「2009年米国経済再生・再投資法(ARRA)」や「医療保険制度改革関連法」を成立させるうえで極めて重要な役割を果たした。また、デイリーは、第1期クリントン政権では北米自由貿易協定(NAFTA)関連法案の米議会での成立を担当する大統領特別顧問に、第2期クリントン政権では商務長官に就任していた。デイリーはSBCコミュニケーションズやJPモルガン・チェース&Coなどの大手企業の役員を務めていたこともあり、産業界と太いパイプを築いていた。第1期オバマ政権前半の規制の強化などにより政権と産業界との関係が悪化した際、オバマ大統領はデイリーを大統領首席補佐官に登用し、産業界との関係修復に努めた。ルーの場合も若き日にティップ・オニール下院議長(民主党、マサチューセッツ州第8区)のスタッフとして議会の機能を肌身で学ぶとともに、クリントン、オバマ両政権では行政管理予算局(OMB)局長に就任し、予算折衝に深く関与してきた。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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