中国・台湾で日本以上の話題になった王羲之の新写本

執筆者:野嶋剛 2013年1月30日
エリア: アジア

「王羲之の書の写本が見つかりました」。新年を迎えて数日たった日、NHKの9時のニュースが報じたとき、「うわさは本当だった」と思った。東京国立博物館でいま開かれている特別展「書聖 王羲之」で王羲之にまつわる新しい発見が明らかにされるといううわさは、11月ぐらいから耳にしていたが、真偽のほどはつかめなかった。

書聖と呼ばれる王羲之は書道史上最大の巨人である。しかし、真跡は一枚も残っていない。ほぼ正確に字姿をいまに伝えるのは、専門の書家が作成した「摹本」と呼ばれる精巧な写本しかない。かつて清の乾隆帝が「天下無双」とほめたたえ、作品の中に「神」と書き込んでしまった台北故宮所蔵の「快雪時晴帖」も極めて精巧な写本である。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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