「低コストの隣国」出現で改革を迫られる北欧三国

2004年10月号
カテゴリ: 国際 金融
エリア: ヨーロッパ

EU拡大を機に、生産拠点が次々とエストニアなどに移転。手厚い社会保障を誇るスカンジナビアの三国から、企業・人材が流出し始めた。[ヘルシンキ発]バルト諸国の優等生と呼ばれるエストニア。首都タリンにはバルト海を隔てて八十キロ、高速フェリーならばたった一時間半しか離れていないヘルシンキからの移住者が急増し、フィンランド政府を慌てさせている。 エストニア政府系の投資誘致会社の幹部は「昨年からフィンランド人の移住者が増え始め、三千人を超えた。エストニアが今年五月一日から欧州連合(EU)に加盟したため、すぐに一万人を突破するのではないか」と笑顔で語る。実はエストニアは現在、所得税率が一律二六%と低い。さらに、今年から三年間で二〇%にまで引き下げる。エストニアに年間の半分以上滞在すれば、実質的に大幅な減税が受けられる計算だ。「年金生活者のほか、企業経営者など高額所得者の移住が目立っている」(同社幹部)。 スウェーデンと並ぶ世界屈指の福祉国家フィンランドでは所得税の累進率が高く、高額所得者はほぼ五割を徴税される。フィンランドの国内総生産(GDP)に対する税収の比率は四五%強。スウェーデンの五〇%強に比べればまだ低いが、それでも世界的に見れば「税金地獄」であることに変わりはない。厳しい課税が充実した社会保障を実現してきたが、エストニア移住はまさに豊かな福祉国家の財政基盤を痛撃しかねない。ヘルシンキ市の幹部は「若干税率を引き下げても流れを変えられない」とお手上げ状態だ。

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