饗宴外交の舞台裏 (81)

日本の食卓外交に秘密あり

執筆者:西川恵 2004年10月号
エリア: アジア

 日本の在外公館の館長である大使や総領事に任命された外交官にとって、連れていく料理人の選定は決して小さくない問題である。公邸でどのような料理を出すかは、どれだけ情報をとれるかと密接に関係しているからだ。 九月初旬、ヤンゴンに新しく赴任した駐ミャンマー大使の小田野展丈・前儀典長は、公邸の料理人にバンコクの日本レストランで働くタイ人を連れて行った。外務省の外郭団体である国際交流サービス協会が、「日本料理を作れるタイ人公邸料理人」として登録している一人である。 小田野大使は「タイとミャンマーは隣国で、気候風土や食材も似ているので、タイ人の方が適任と思います。将来、母国で日本料理を普及してくれれば、日・タイの文化交流にもなります」と語る。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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