移民大陸・欧州に学ぶ フランスはあくまでイスラム系移民「同化」を目指す

執筆者:国末憲人 2004年11月号
エリア: ヨーロッパ

共和国「フランス」の理念を受け入れるか否か。人口の一割近くを占めるイスラム系移民の扱いに悩む政府の対策は―― 猛烈な仕事ぶりと派手なパフォーマンスで人気を集め、シラク大統領の後継者の有力候補にまでのし上がってきたニコラ・サルコジ財務相は、内相時代の昨年五月、ルモンド紙の論壇でイスラム系移民の同化問題についてこう論じた。「『フランス共和国の基本理念とイスラム教とは両立しない』などと決めつけるのは、差別意識に根ざした発想だ。他の宗教を信じる人々と何ら異なる点はない」 イスラム系移民やその子孫も政教分離や男女平等といったフランスの理念を受け入れ、仏社会に同化することができる。イスラム教は妨げとならない――。サルコジ氏がそう考えるのは、彼自身が移民の子孫として仏社会に同化した自信に基づくからに違いない。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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