「黄金の落下傘」を打ち破った男――スイスで高額報酬・退職手当規制

国末憲人
執筆者:国末憲人 2013年3月7日
エリア: ヨーロッパ

 欧州で割と頻繁に耳にする経済ニュース用語に「ゴールデン・パラシュート」(黄金の落下傘)という言葉がある。自分だけ助かろうと、墜落していく飛行機から落下傘で飛び降りる。しかも、その落下傘は高価な金でできている……。転じて、企業が沈みゆくにもかかわらず法外な退任手当を手にする経営者の傲慢さ、自分勝手さを批判する時に使われる。


 日本語で「特恵的退任手当」などと訳され、企業防衛のために導入された制度だった。役員が就任時に「会社が買収された場合には、高額の手当を得て退任する」旨の契約を会社と交わす。そうすると、高額手当が壁となって、買収される恐れが少なくなるからだ。しかし、それは逆に、役員の役得でもある。企業が買収され、多くの従業員がリストラされて路頭に迷うにもかかわらず、役員だけが莫大な富を手に着地できる。


 スイスで3月3日、国民投票があり、上場企業経営者の高額の報酬や退任手当を規制する法令が整備される見通しとなった。憲法を改正し、役員報酬の金額を株主総会が毎年決定すると定める。また、役員に対して退職手当を出したり事前に報酬を決めたりすることも禁止。違反した場合には、3年以下の禁固刑が科せられる。「黄金の落下傘」を事実上規制する試みであり、同様の行為が問題になってきた欧州各国からも評価の声が相次いだ。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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