オバマのイスラエル訪問の意味

池内恵
執筆者:池内恵 2013年3月20日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東 北米

 オバマ米大統領が3月20日昼に、イスラエルのベングリオン空港に到着した。訪問のハイライトとなるのは、明日の演説である。オバマは現地時間21日夕方(日本時間22日未明)に、エルサレムの国際会議場(Binyanei Ha'Uma; Jerusalem International Convention Center)で一般市民を含む聴衆に向けて演説をする。議会(クネセット)議事堂においてでもなく、首脳に対してでもなく、イスラエル国民に向けてオバマが何を語るかは、二期目のオバマ政権の外交の方向性を示すものとして、広く世界から注目されている。

 オバマ政権は二期目の最初の外遊先にイスラエルを選んだ。23日までの今回の中東訪問では、エジプトにもサウジアラビアにもトルコにも立ち寄らない。ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区や、隣国ヨルダンは短い時間訪問するものの、実質的には「イスラエルにだけ」行くというに等しい日程である。

 米・イスラエルの二国間関係を再確認することが主要なテーマとなるが、それだけで終わった場合、米国の中東地域における影響力・威信の低下は決定的になったと評されかねない。

 オバマ政権は一期目の前半に、ネタニヤフ政権に占領地への入植凍結を中心とした譲歩を求める圧力を強める一方、パレスチナ側やアラブ世界側に対しては歩み寄る演説を行なった。このことはイスラエルの反オバマ感情を高めると共に、ネタニヤフ政権による米国内でのあからさまな「オバマつぶし」の活動を活発化させた。ワシントンの中東専門家たちの間のジョークに「ネタニヤフ政権が目指している政権転覆は、テヘランではなくワシントンだ」というものがあったが、ネタニヤフは実際にロムニー候補を公然と支持しさえした。オバマ再選阻止、あるいは米国にイラン攻撃に踏み切らせるという究極の目標の実現以外については、ネタニヤフ首相の完勝と言ってよく、オバマ政権は一期目の後半に、対イスラエルや中東和平についてほとんど何もしなかったと言ってよい。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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