異文化としての女子サッカー

星野 智幸
執筆者:星野 智幸 2013年4月1日
カテゴリ: スポーツ 文化・歴史

 2004年アテネ五輪、女子サッカー準々決勝。初のベスト8に進んだ日本は、優勝候補アメリカと対戦した。試合はいつものごとく劣勢ながら、日本は山本絵美が右足から繰り出す美しいフリーキックで同点に追いつき、アメリカに食らいついていた。

 アメリカは、1990年代に女子サッカーが本格的に発展し始めたときから、世界のトップに君臨している。アメリカでは、フットボールと言えばアメフトを指し、スポーツの中でも最高位に君臨していたのに対し、サッカーは女子どもやヒスパニック系移民のスポーツという扱いだったため、伝統とも花形スポーツのプライドとも無縁に、独自の発展を遂げたのだ。

 当時、アメリカに拮抗していたのが、ノルウェー、スウェーデンの北欧勢にカナダやドイツ、中国、北朝鮮だった。いずれも、女性の社会進出が進んだ国である。女子サッカーをまず引っ張ったのは、そういった女性の文化だった。

 日本は一歩遅れて、それらの国を追っていた。澤穂希らのアメリカリーグ挑戦などを経て、その差は確実に縮まりつつあった。

 

なぜ抗議をしなかったのか?

 同点から10分後の、さあこれから、というとき。アメリカは日本のゴール前に高いボールを放り込もうとする。日本の守備陣は、絶妙の駆け引きでオフサイドトラップをかける。オフサイドとは、待ち伏せ攻撃を禁止するルールで、オフサイドトラップとは、わざと敵の選手を待ち伏せした格好にさせてファウルを取る高度な戦術だ。このとき日本のオフサイドトラップは見事に決まって、アメリカの選手2人が日本の守備陣より前に飛び出していた。

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執筆者プロフィール
星野 智幸
星野 智幸 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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