【ブックハンティング】事実が浮き彫りにした日銀の姿

執筆者:藤原作弥 2004年12月号

 二〇〇三年三月に任期満了で日銀副総裁を退任してから一年半になる。友人、知人から「そろそろメモワールを書いたらどうか」などと言われるが、その意思は皆無。そのためのメモや日記などの記録すら残していない。 私にその気持ちがないのは、金融政策を回顧し論証するほどの資格がないことのほか、前副総裁が書けば“みなし公務員”としての守秘義務を侵す危険があるからである。また、ノンフィクション、フィクションいずれの形式にせよ、金融政策の当事者が書けば、主観に走るおそれがある。以上は、私的前口上。 さて、新日銀法施行後に刊行された客観的な第三者の筆による“日銀研究”の主要な成果物としては、『縛られた金融政策―検証 日本銀行』(藤井良広、日本経済新聞社)や『ドキュメント ゼロ金利―日銀VS政府 なぜ対立するのか』(軽部謙介、岩波書店)の二冊がある。 いずれも〈独立性〉と〈透明性〉の二大理念に基づく新日銀法が施行された一九九八年四月からの丸五年間、速水優・総裁体制下の日銀の金融政策を回顧したドキュメント。両書とも当時の日銀記者クラブに所属し政策運営を丹念に追いかけたベテラン・ジャーナリストの調査報道だけに、よくまとまっている。日銀が公表する政策委員会の議事要旨だけではなく、情報公開法に基づく請求資料をも渉猟しながら、政策決定会合における議論を細かに分析した跡が窺われる。

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