「シリアとの関連」で読み解くオバマ中東歴訪――安倍首相もヨルダン訪問を

 オバマ大統領のイスラエル・中東訪問は、期待値のバーを下げた中で行なわれた。期待も大きくないかわりに、失望もないという戦略だ。米国内の報道も、どうせ変わらないだろう、というシニカルな見方が多かった。だからといって、今回の訪問が外交的に意味がなかったと考えるのは間違いだ。外交というのは、地道な積み上げが意味を持つこともある。とくにパレスチナ問題のような長期的な難しい問題ではなおそうだ。

 今回のオバマ大統領の戦術は、世界が全般的にオバマに好感をもつなか、むしろ人気がないとされるイスラエルとの距離を縮めることだったのだろう。一般のイスラエル人との距離を縮める役割がイスラエルでのスピーチに期待された。やはり関係が良くないとされているネタニヤフ首相との関係改善も重要なテーマであった。オバマ大統領はイスラエルでのスピーチで、これまで以上にイスラエルの安全保障に理解を示し、歴史的な2国間の紐帯を示した。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席研究員。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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