実はガスを買う気なし?「サハリン1」をめぐる思惑

執筆者:五十嵐卓 2004年12月号
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: 中国・台湾

 米メジャーのエクソンモービルが主導する大規模エネルギー開発プロジェクト、サハリン1がターゲットを日本から中国に転換した。当初のもくろみだった首都圏へのパイプラインによる供給にまったくメドが立たないからだ。新たに浮上したのはサハリンからロシア沿海州にパイプラインを敷設し、中国東北部まで一気に南下させる計画で、パイプラインの総延長は二千五百キロにも達する。 中国はエネルギー需要の増大をカバーするため、原油・天然ガスの調達源の多様化に動いており、サハリン1からの供給も渡りに船といえる。ロシア側は九〇年代から、米国色の強いサハリン開発に中国をかませることで米国の影響力を弱めたい考えを持ってきた。エクソンモービルはプロジェクトに早くメドをつけ、資金回収に入りたい。米露中の利害は一致しているようにみえる。 だが、中国サイドから聞こえるのは「パイプラインを引いてもガスの買い手はつかない」との声だ。中国ではタリム盆地や甘粛省、四川省、渤海湾などで天然ガスの開発・生産が今後本格化する一方、沿海部では液化天然ガス(LNG)プロジェクトが、建設中の広東省の案件を含め少なくとも五件以上ある。しかもいずれもコストはサハリンからのガスよりはるかに安価な見通しだ。中国政府が世紀のプロジェクトと意気込んだタリム盆地から上海に延ばす総延長四千二百キロのガスパイプライン「西気東輸」も買い手探しに大苦戦しているほど。中国政府としては、コビクタ・ガス田などから北京に向けてパイプラインでガスを運ぶ東シベリア・プロジェクトとサハリン1を競わせ、価格の押し下げを狙っている模様だ。もともと中国の本心が東シベリアであることからすれば、「サハリン1は当て馬」である可能性が高い。

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