北朝鮮「危機」の深層(上)金正恩は軍を掌握しているのか

平井久志
執筆者:平井久志 2013年4月17日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 朝鮮半島

 北朝鮮は弾道ミサイルとみられる物体を列車で日本海側に移送した。米国をはじめ国際社会は中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程2500-4000キロ)や「ノドン」(同1300キロ)、「スカッド」(同500キロ)など複数のミサイルを発射する可能性があるとして4月10日前後から警戒態勢に入ったが、故金日成(キム・イルソン)主席の101回目の誕生日である4月15日になってもミサイルの発射はなかった。

 3月5日に金英哲(キム・ヨンチョル)偵察総局長が朝鮮人民軍最高司令部報道官の声明を発表し、朝鮮戦争の休戦協定を白紙化すると宣言して以来、北朝鮮は「1発の銃声で世界的な核戦争が起きても不思議ではない」と世界を威嚇し、空襲警報を発令したり、「1号戦闘勤務態勢」を命じたり、様々な恫喝と揺さぶりを続けたが、本稿執筆時点では「ミサイル」発射はない。

 北朝鮮が「オオカミ少年」なのか、「肩すかし」戦術で世界を揺さぶっているのか、事態が本当の危機なのか、まだ明確ではない。だが、高まった危機的な状況が「出口」を求めて動き始めた感じが生まれつつある。

 

「ありもしない『挑発』」

 ここに来て、北朝鮮に近い消息筋は「ミサイル発射実験をしても、朝鮮の領海周辺でやれるレベルのものだ」と語った。この消息筋は中距離弾道ミサイル「ムスダン」については言及を避けた。北朝鮮は黄海では3月末まで、日本海では4月末まで船舶の禁止区域を設定していた。「スカッド」や「ノドン」であればブースの長さや打ち上げ角度などを操作すれば、北朝鮮領海周辺で実験することも不可能ではない。この消息筋の簡単なコメントの背後には、「ムスダンの発射準備は米韓合同軍事演習でわれわれへの脅威が現実になった時への対応。落下地点の区域指定もしておらず、米国側が挑発をしなければムスダン発射はない。発射実験をしてもスカッドやノドンだったが、それも今回は見送った」というニュアンスを感じた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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