インテリジェンス・ナウ

「インテリジェンスの政治化」で混乱するシリアの「サリン疑惑」

執筆者:春名幹男 2013年5月15日
エリア: 中東 北米
 シリアはサリンを使ったのか?(5月1日のメーデー、ダマスカスで労働者を激励するシリアのアサド大統領=右=[国営シリア・アラブ通信提供])(C)AFP=時事
シリアはサリンを使ったのか?(5月1日のメーデー、ダマスカスで労働者を激励するシリアのアサド大統領=右=[国営シリア・アラブ通信提供])(C)AFP=時事

 オバマ米大統領は昨年来、シリアのアサド政権に対して、「化学兵器の使用」は「レッドライン(許容できない一線)」を越えたものとみなす、と繰り返し警告してきた。

 だから、4月25日「シリアが化学兵器を使用した」との米情報機関の「評価」が発表された時、これで、米軍はシリア内戦に介入か、と思った人は少なくなかっただろう。

 しかし、この評価は最終的な結論ではなかった。同日ホワイトハウスで、記者団に対して匿名で背景説明をした米政府高官は「情報評価だけでは十分ではない。確実性のある、信頼できる事実を得て、初めて意思決定をする」と述べた。この程度のインテリジェンスでは米国は介入を決められないというのだ。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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