“熱帯への進軍”最前線を歩く(1) カンボジア――四川・重慶ルート

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2013年5月22日
カテゴリ: 国際 政治 文化・歴史
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 4月27日から1週間ほど連休を利用してプノンペン、ホーチミン、ハノイを回った。

 そこで目にしたのは経済建設に邁進し野放図に巨大化する消費都市ではあっても、かつて米ソ両超大国を翻弄し、国際政治を激震させた“民族解放闘争の栄光”ではなかった。カンボジアではポル・ポト時代の虐殺関連施設が、ヴェトナムでは南部ジャングルの地下に張り巡らされた総延長250キロに及ぶといわれる対米戦争地下壕基地が、観光施設に変貌していた。一時はインドシナにおける民族解放の星と讃えられたポル・ポト派の中核であったオンカーも、超ローテク武器でハイテク近代装備の米軍精鋭を撃破したヴェトコンも、遠い昔の夢物語。儚い蜃気楼に過ぎなかったようだ。

 我が国ではアベノミクスによる円安・株高が沈滞著しかった経済を好転させる一方、安倍外交は中国包囲網構築に向け着実に布石を打ちつつあるとの見方も広がる。だが対中外交を考えた時、不確定要素が多すぎる。やはり短兵急に結論を求めることは厳に慎むべきだろう。

 そこで先ずは中国包囲網の現場に触れてみようと思い立ったわけだが、かつての民族解放闘争の最前線は、予想に違わず中国語(華語と広東語)が交わされており、覇権を目指す中国による“熱帯への進軍”の最前線へと変貌していた。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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