インテリジェンス・ナウ
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ウクライナ情報機関SBUは本当はどちらの味方?

春名幹男
執筆者:春名幹男 2005年3月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ ロシア

 どす黒い肌の表面にブツブツの毛穴が見えるウクライナのビクトル・ユーシェンコ大統領の顔。正視できないほどのその顔に底深い秘密が潜んでいる、と思えてならない。 大統領がダイオキシンの毒を盛られたのは昨年九月五日のこと。場所は、ウクライナ情報機関、国家保安局(SBU)幹部の別荘。ユーシェンコ氏はイーゴリ・スメシュコ長官らに、SBUが選挙に介入しないよう申し入れたと伝えられている。食事にはすしなどが出され、その晩、ユーシェンコ氏は激しい頭痛、腹痛を訴えた。チャーター機でウィーンの病院に搬送され、緊急治療を受けて助かり、後遺症を押して、選挙戦を戦うことができた。 それだけ聞けば、犯人はSBUに違いないと思ってしまう。SBUは旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後身で、約三万八千人もの要員を抱え、今もKGBと同様、特殊工作の任務から法執行の権限まで、幅広い能力と権力を維持しているのだ。 だが、事実はそれほど単純ではなさそうだ。“オレンジ革命”を成功させ、再選挙でユーシェンコ氏を当選させた陰の功労者は、実はSBUだったという情報が、ユーシェンコ政権の始動とともに表面化したのである。 昨年十一月二十一日の大統領選決選投票後、「選挙は無効」と主張する野党支持者十万人以上が最高会議などがある首都キエフ中心部を埋めた。クチマ大統領さえ自分のオフィスに近づけないほどのマヒ状態に陥った。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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