饗宴外交の舞台裏 (86)

拡大欧州に共有された“アウシュビッツ”という歴史

執筆者:西川恵 2005年3月号
エリア: ヨーロッパ

 出張した一月下旬のパリには寒波が襲っていた。テレビをつけても、新聞を広げても、アウシュビッツ強制収容所がナチス・ドイツから解放されて六十周年(一月二十七日)の話題で持ちきりだった。 第二次大戦中、フランスからは数十万人のユダヤ人が強制収容所に送られた。それはドイツ軍占領地域だけでなく、対独宥和のビシー政権支配下においても例外ではなく、ユダヤ人狩りでフランス官憲はドイツ軍に積極的に加担した。ユダヤ人抑圧はアウシュビッツを最初に解放したソ連にも、収容所が置かれたポーランドにも言える。バチカンにしても時のローマ法王はナチスに妥協的だったと、いまなお批判されている。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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