日本が直面する東アジアの「剥き出しの政治力学」

執筆者:中西寛 2005年4月号
エリア: 日本

二月十九日、第二期ブッシュ政権と第二次小泉改造内閣で初めての安全保障協議委員会(2+2会合)が開催された。日米間における懸案は、昨年八月にブッシュ大統領が表明した、米軍の世界的再編に伴う日米安保体制の見直しであり、今回の2+2会合も、直接的にはそのための対応としての側面が強かった。
 にもかかわらず、今回の2+2会合後に公表された共同文書は予想以上に大きな国際的波紋を呼んだ。その反響の背景には、東アジアの安全保障環境がかなり急激に流動化する徴候を示しており、そうした中で日米安保の性格が大きく変化し始めているのではないかとの関心があったと考えられる。
 共同文書の目玉は、「共通戦略目標」という従来の日米安保関係では用いられてこなかった言葉を使って、両国の安全保障上の基本指針を確認したことであった。そこには、地域レベルと世界レベルの「共通戦略目標」に含まれる内容として、それぞれ十二および六の項目が挙げられている。前者の中に特に話題を呼んだ台湾海峡への言及が入っているのだが、全体として目立つのは、地域レベルの項目が固有名詞を挙げた具体的な内容となっており、たとえば「テロの防止、根絶」といった基本方針を列挙した世界レベルの項目とは差を感じさせる内容となっていることである。
 米軍再編やその根底にある米軍トランスフォーメーション(変革)の主眼は北東アジアから北アフリカにかけての紛争多発地帯「不安定の弧」への対応にあるとしばしば言われるが、アメリカの当面の政治的、軍事的関心が中東地域に集中していることは否定しがたい。そうしたバランスの傾きを補う意味を込めて、今回の2+2では米政府の東アジア安全保障関係者と日本の外交・防衛当局が、東アジア情勢への対応にかなりの比重を置いたことが推測できる。
 ただ、「共通戦略目標」の個別具体的項目それ自体が、従来表明されてきた方針と根本的に矛盾するわけではない。では今回の共同文書が、たとえば一九九六年の安保共同宣言とは異なるトーンを感じさせるのはなぜか。それは文書の内容よりもその調子、あるいはそこに流れている精神のレベルに新しさがあるからだ。

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執筆者プロフィール
中西寛 1962年生れ。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。米シカゴ大学歴史学部博士課程留学などを経て、2002年から京都大学教授。『国際政治とは何か』(中公新書、読売・吉野作造賞受賞)、「新しい日本外交の基本方針」など著書・論文多数。編著に『歴史の桎梏を越えて 20世紀日中関係への新視点』(千倉書房)、『新・国際政治経済の基礎知識』(有斐閣)など。
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