ムルスィー退陣へ向け、軍の最後通牒の期限が迫る

池内恵
執筆者:池内恵 2013年7月3日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 エジプト軍の設定したムルスィー大統領の事実上の辞任期限が迫る。7月1日の午後4時30頃に「48時間以内」に大統領と諸政治勢力の合意がなされなければ軍が独自の工程表を示すと宣言したため、日本時間で言うと本日3日夜の11時半頃が期限となる。軍の後押しを得たデモ勢力は勢いづいている。

もはや繕いようもない言葉の応酬

 ムルスィー大統領の側は軍の要求を拒否する姿勢を変えていない。2日のムルスィーのテレビ演説では20回以上も「正統性(シャルイーヤ)」という言葉を繰り返し、自由で公正な選挙で選ばれた大統領の職を守るために「死を賭す」と宣言した。

 その演説の直後にスィースィー国防相は自らのフェイスブックのページに「最後の時」というタイトルのエントリを投稿し「エジプトと人民はあらゆるテロリストと過激派と無知な者たちに対抗するために血の犠牲を厭わない」不吉な言葉を発した。どちらも後には引けない状況である。

 政府系・独立系メディアも共に、ムスリム同胞団の直接支配にあるものを除いて、全面的に軍とデモを支持して雰囲気づくりをしている。7月3日の政府系『アハラーム』紙は一面に「辞めさせられるか、自ら辞めるか」と掲げ、48時間の期限切れ直後に軍が工程表を強制的に裁定すると報じている。軍側は「憶測にすぎない」と否定してみせるが、ムルスィー大統領への圧力と、世論へのアドバルーンを上げたと見られる(現在アハラーム紙アラビア語版の該当記事にはつながりにくくなっている)。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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