“熱帯への進軍”最前線を歩く(6) 滇緬公路での日中戦争の実相

樋泉克夫
 壁に貼られた奇妙な‶通知″ (2012年5月、筆者撮影。以下、写真はすべて同じ)
壁に貼られた奇妙な‶通知″ (2012年5月、筆者撮影。以下、写真はすべて同じ)

 国境の街から中国内陸部に戻り、芒市から龍陵に入った。

 宿舎である『龍陵賓館』の周囲を歩くと、ホテルに沿った壁に貼られた新聞紙見開き2頁の真っ赤な紙が気になった。最上段中央に「通知」、最下段は「龍山社区居民委員会 2012.4.16」と記されている。「居民委員会」は共産党政権の最末端に位置する組織だ。

 さて、周辺の「居民」になにを「通知」しているのか、面白そうなので読み進む。

「通知」は、計画生育を進めるため、「計画生育家庭意外障害保険」と「計画生育手術安康意外傷害保険」への加入を積極勧誘している。

 じつは4年ほど前に湖南省の西部農村を歩いた時、農家の壁に書かれた「厳禁溺棄(嬰児を水に漬けて殺してはならない)」といった類のスローガンを見て驚いたことがある。今回も、農村では「女の子も国の宝」といったスローガンを多く目にした。ということは、1人っ子政策にもかかわらず、農村部では現在でも男尊女卑の風潮が見られるということだ。

 それよりさらに5年ほど前、農村部で1人っ子政策がどのように進められているのか興味を持って調べたことがあるが、ある地域では、居民委員会の委員――往々にしてお節介なオバチャンたち――が目を光らせ、妊娠していると思われる女性を見つけると問い質し、2人目以降なら説得し連れ添って病院まで出向き堕胎手術を受けさせるといった事実を知って、吃驚したことがある。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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