ネット世界で利益を稼ぐ「ロングテール現象」とは何か

執筆者:梅田望夫 2005年4月号
カテゴリ: IT・メディア

 ロングテール(Long Tail:長い尾)という言葉を聞いたことがありますか。 IT(情報技術)の世界では無数の新語が現れては消えていくのだが、この言葉は昨年秋頃から少しずつ米国で使われるようになった。ロングテールは、インターネットの本質に関わる極めて重要な問題提起を含む新語ゆえ、これから日本でも話題になる機会が増えていくはずなので、詳しく解説したいと思う。 ロングテールとは何なのか。本という商品を例にとって考えてみよう。一年間にどんな本がどれだけ売れたのかを示す棒グラフを作ってみる。縦軸に売れた部数を取り、横軸には左から第一位『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』、第二位『世界の中心で、愛をさけぶ』、第三位『バカの壁』……と売れた順に一冊ごとに棒グラフを連ねていくことにしよう。横軸には「一冊あたり五ミリ」、縦軸には「千部あたり五ミリ」でグラフを書くと、本の売れ方の全体像はどんな形状になるでしょうか。 縦軸は「千部で五ミリ」だから「二百万部で十メートル」になる。第一位の販売部数はそれを軽く突破する。でも第十位になると販売部数は一桁少なくなるから、グラフ左端の形状は十メートル以上の高さから急降下したような形になる。ではこのグラフをどんどん右に向かって書いていくとどうなるか。あるところからは、売れる部数の少ない本が延々と並ぶことになる。日本での年間出版点数は約七万点なので、三年分並べると二十一万点。「一冊五ミリ」で棒グラフを書くと「二十万冊で一キロメートル」である。第二十万位の本は、売れていてもせいぜい一冊であろう。一冊の棒グラフの高さは「千部で五ミリ」だから五ミクロン。よって横一キロにわたって伸びたグラフ全体は、高さ十メートルから急降下して、あるところから地面すれすれを這う。そして一キロ先では五ミクロンの高さになるまでなだらかに下っていく形状になる。体高十メートル以上で一キロメートル以上のロングテールを持った恐竜。それを横から見たシルエットのようだ。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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