稀代の悪法か「食糧安全保障法」が抱える問題点

執筆者:緒方麻也 2013年7月8日

 インドの総人口の3分の2に相当する低所得層約8億2000万人に、市中より大幅に安い価格で米や小麦などの穀物を提供する「2013年食糧安全保障法」の施行が、7月3日の同国閣議で承認された。2014年春に迫った次期総選挙をにらんだ人気取りという性格が強いことは否定できないが、政府は同法が貧困層や下位中間層の生活向上に大きな効果があると喧伝、珍しく野党などからの反対もなかった。しかし、この法律はマクロ的にもミクロ的にもさまざまな問題をはらんでおり、悪法として後世に語り継がれる可能性もある。

 

巨額の財政負担

 食糧安全保障法が施行されれば、受益対象者はコメを1キロ3ルピー(1ルピー=約1.7円)、小麦なら同2ルピー、コアース・グレインと呼ばれるトウモロコシ類なら同1ルピーという補助金付きの格安価格で、1人当たり月間5キロまで購入できる。銘柄にもよるが、インドにおけるコメの通常小売価格はだいたい1キロ18-25ルピー前後なので、おおよそ市価の6分の1から8分の1程度の値段で買えることになる。

 この事業を行なうため、政府は穀物の調達、輸送、保管などで新たに年間約1兆2500億ルピーの財政負担を背負い込む。2013年度予算では一般歳出の実に14%、2兆3100億ルピーの補助金を食糧、肥料、燃料などに投じていることから見ても、新事業にかかるコストの大きさがわかるだろう。もちろん政府が取り組んでいる財政赤字圧縮への努力には大きく逆行することになる。

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