言論の自由の闘士「メナール氏」の意外な「転身」

国末憲人
執筆者:国末憲人 2013年7月10日
カテゴリ: 国際 政治
エリア: ヨーロッパ

 その名に聞き覚えがなくても、2008年の北京五輪の聖火リレーを派手に妨害した人物と言うと、イメージを喚起される人が少なくないだろう。市民団体『国境なき記者団(RSF、本部パリ)』の創設者、初代事務局長として言論の自由を世界に訴え、独裁国家でのジャーナリスト抑圧を告発してきたロベール・メナール氏(60)である。2008年に事務局長を退任して以来、しばらく消息を聞かないと思っていたら、予想もしない方向に転身していた。右翼『国民戦線(FN)』の支援を受けつつ、南フランスの街ベジエの市長を目指して来春の統一地方選に立候補する、というのである。

 ベジエ市は人口7万あまり。多くのフランスの地方都市同様、中心部がシャッター街となり、経済の停滞とともに市民の不満が蓄積しているという。

 人権の闘士から「右翼の市長」候補へ。これは転落なのか。何か意図があってのパフォーマンスなのか。彼なりの論理に従った末に出した結論なのか。憶測が広がっている。

 

最初の夢は「神父」

 フランスの植民地だったアルジェリア・オランで1953年、欧州系入植者の家庭に生まれた。父親は印刷業に携わり、右翼の秘密組織に属していた。1962年、アルジェリアが独立。一家は、9歳の彼を伴ってフランスに引き揚げ、当初中南部アヴェロン県の村に、続いてベジエに移り住んだ。生活は貧しく、貧困層が多く住む集合住宅街で、移民らとともに暮らしていたという。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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