「スノーデン問題」めぐり結束固める「中南米左派政権」

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2013年7月24日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 スノーデンCIA(米中央情報局)元職員の亡命問題は、エクアドル、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアという中南米の反米政権が亡命先として浮上したことで、ベネズエラのチャベス前大統領の死後、反米モデルの行き詰まりが囁かれた反米左派政権の存在を改めてクローズアップした。とくに関連して、モラレス大統領を乗せたボリビアの政府専用機が欧州各国に領空通過を拒否された事件は、反米左派政権の結束を強める格好の材料となった。

 

大統領を13時間空港に留め置き

 亡命先が反米のアンデス諸国の政権と噂される中、モスクワで開かれたガス輸出国フォーラム(GECF)首脳会議に出席したボリビアのモラレス大統領が7月2日、本国へ向けて帰国の途について間もなく事件は起きた。大統領を乗せたボリビア政府専用機は、スペイン領カナリア諸島のラスパルマスを経由して帰国する予定であったが、航路に当たる欧州諸国に領空通過を拒否された。そのため、急きょオーストリアのウィーンの空港に着陸を強いられ、そこで13時間、留め置かれることになった。

 正確なところは不明だが、スノーデン氏が搭乗していることを疑った米政府の要請に従って、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルの政府が通過を禁止する措置に出たものと考えるのが自然である。モラレス大統領はモスクワで記者団の質問に対し、亡命の申請があれば検討すると答えていたことも伏線となったといえる。だが、相手がいかに小国とはいえ、国際条約を無視し一国の主権国家の元首を乗せた専用機の通過を拒否するという判断は、ただ事ではない。同時にこの判断は、米国の機密情報の漏えい問題が国家安全保障上いかに重要性を帯びているかを窺わせ、スノーデン氏が政府専用機に搭乗しボリビアに亡命するという情報を掴んだ情報機関の杜撰さをも示すものとなった。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順