「総合安全保障戦略」策定のための人材は十分か

2013年8月1日
カテゴリ: 外交・安全保障
エリア: 日本

 産経新聞によると、安倍晋三首相は国家安全保障会議(日本版NSC)創設に連動し、「国家安全保障戦略」を初めて策定する方針を固めた。記事には「首相官邸主導で外交・安保政策を立案するNSCが発足する来春にも策定する方針で、NSC創設の意義を象徴する戦略文書となる」とある(ウェブ版7月8日)。

 

 これまで我が国は、国家安全保障の戦略的指針が明確ではなかったが、ようやく安全保障戦略の確立に向けて動き始めた。「国家安全保障戦略」の策定は簡単ではないし、外交、防衛、経済などの専門家の参画が必須である。しかし、これを進める上で、何より深刻な問題は、特定分野の優秀な専門家は多数いるものの、策定のノウハウを熟知する人材がいないことである。

 

 今日、何の違和感もなく使用されている「安全保障戦略」という用語の概念はそれほど明確ではない。それは「安全保障」を語る者がどのような世界観や価値観を採用するかによって、安全保障概念の規定が違ってくるからである。伝統的なリアリズムの観点では「国家が自国の領土、独立及び国民の生命・財産を外国の軍事的侵略から軍事力によって守る」ことである。一方、リベラリズムの観点からは、「諸国家が相互的な関係の中で国際システム自体の安定を協力して追求することによって安全保障を実現する」と定義する。さらに、コスモポリタニズムでは、「現代における安全保障の最重要課題は国家の安全を軍事的に追及することではなく、紛争を未然に防止するためのグローバルなシステムを確立するとともに、積極的平和の状況を作り出す努力を、グローバルな市民の連帯によって作り出そうとする」(防衛大学校安全保障学研究会編著『安全保障学入門』参照)。

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