饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(88)

シラク大統領が堪能した“俄か仕立て”の鉄板焼き

西川恵
執筆者:西川恵 2005年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 フランスのシラク大統領が日本を公式訪問した。大統領にとって沖縄サミット以来、五年ぶりの訪日だった。 三月二十六日、大阪入りした大統領は、工場見学、関西経済連合会との会合をこなした後、お目当ての大相撲春場所に。大の相撲ファンの大統領は日本相撲協会の北の湖理事長から説明を受けながら、取組表を手に観戦。一つ一つ決まり手を書き込み、結びの一番で横綱朝青龍が優勝を決めると大喜びだった。 観戦後は横綱朝青龍、相撲協会幹部と夕食をともにし、「相撲を見られてよかった」と繰り返した。私が知る限りフランス人で相撲好きな人はさほど多くないが、大統領はどこに魅かれたのか。「磨かれた技が一瞬で巨漢を倒す。これが相撲の真髄だ」。大統領は隣のベルナデット夫人に説明している。 二日目は開幕したばかりの「愛・地球博」を見学し、夕方、新幹線で東京駅に。そこから小泉首相との会談のため外務省飯倉公館に直行した。 シラク大統領をどう迎えるか、日本側はこれまで以上に知恵を絞った。両国には二つの懸案があった。東アジアの安定を揺るがしかねない欧州連合(EU)の対中武器禁輸解除問題でフランスが解除派の先頭に立っていることと、国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致での日仏間の綱引きだ。会談は厳しいものになるだろうが、一方で、日本文化の理解者である大統領は大切にしたい。会談後の夕食会が「飯倉公館始まって以来」という内容になったのもそのためだ。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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