【ブックハンティング】「文化の魔術師」が解く日中韓ジャンケン関係

平井久志
執筆者:平井久志 2005年5月号
カテゴリ: 書評

 李御寧さんはやはり「文化の魔術師」である。『ジャンケン文明論』(新潮新書)では、われわれが慣れ親しんできた「ジャンケン」を通じて、私たちを取り巻く文化の過去、現在、未来をまた見事に分析してくれた。 西洋の子どもはコインを投げて何かを決めるが、アジアの子どもはジャンケンで決める。コイン投げには裏と表という相反する対立しかないが、ジャンケンではグー、チョキ、パーという三すくみの関係性の世界が広がる。 李御寧さんによる、こんな導入からして「なるほど」と思ってしまう。そして次第に古今東西の言葉や行為、概念を自由自在に引き出しながら展開される「李御寧ワールド」にはまってしまう。 李御寧さんは一九八二年に日本人論としては既に名著になっている『「縮み」志向の日本人』(学生社)を発表し、「縮み」をキーワードに日本文化を見事に分析した。その博識と発想の面白さにはまり込んだ読者は多いはずだ。 八九年には『ふろしき文化のポスト・モダン』(中央公論社)を発表、西洋の「カバン文化」の「入れる文化」に対するアジアの「ふろしき文化」の「包む文化」の柔軟性を説いた。 李御寧さんの著書を読み出すと「そうか、そうなんだ」と知的な好奇心をどんどん刺激される快感がたまらない。だが、天の邪鬼な僕は、その一方の頭の中で「これはあまりに面白すぎる。一つのキーワードでくくれない、こぼれてしまった部分があるのでは」と抵抗しているのだが結局は著者に負けてしまう。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順