フランス人が迷いに迷った欧州憲法の「是非」

執筆者:波津博明 2005年6月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

国民投票を前に、なぜ反対論が盛り上がっているのか。答えが「ノン」と出れば、EUのあり方が根底から問われることにも―― 欧州連合(EU)の価値観と将来、そしてメカニズムを規定するEU憲法を批准するための国民投票が五月二十九日、フランスで行なわれる。賛否は真っ二つに割れており、結果は予測し難い。仮に欧州統合の中核フランスで「ノン」となればEUへの打撃は甚大だ。 世論調査機関IPSOSによると、反対派最大の理由は「過度の経済自由化志向」。確かにEU憲法は「自由で歪められない競争のための単一市場」「高い競争力を持った社会的市場経済」などと「競争」を強調する。一方、これまでのEU条約にあった「公共サービス」への言及は消えた。 競争力強化は、必然的とはいわないまでも、労働条件引き下げを含むのが通例だ。当然ながら、財界を代表する欧州産業連盟は憲法を支持したが、庶民はそこにも不安を感じる。 ところが、憲法第二部は、労働者保護などを規定した「欧州基本権憲章」になっている。ニース首脳会議(二〇〇〇年)で調印された基本権憲章は、死刑禁止やスト権、年次有給休暇の保証などに加え、欧州市民権も網羅した総合的な権利の章典で、これを画期的と見る人々も多い。

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