南北とも開城工団「閉鎖」の重圧に耐えられず合意

執筆者:平井久志 2013年8月17日
エリア: アジア

 存廃の危機に直面していた開城工業団地は、8月14日に行なわれた韓国と北朝鮮の7回目の協議でようやく同工業団地を正常化させることで原則合意した。南北は正常化に向けての5項目の合意文を発表し、開城工業団地は「閉鎖」という最悪の事態は避けられる見通しとなった。しかし、現実に団地を再稼働させる手続きや日程、稼働中断による韓国企業への補償問題などは、今後設立する「開城工業団地南北共同委員会」で協議することになり、正常化までにはなお曲折が予想される。

 

正常化を求めるしかない北朝鮮

 北朝鮮は5月に入ると挑発路線を対話路線に転換したが、4月9日に労働者を撤収し操業が中断していた開城工業団地について明確な姿勢を示さなかった。しかし、祖国平和統一委員会は6月6日に「特別談話」を発表し、南北当局者会談を提案した。談話では、開城工業団地の正常化だけでなく金剛山観光の再開、離散家族の再会も協議できるとした。その上に、朴槿恵(パク・クネ)大統領の父・朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の南北合意である「7.4共同声明」(1972年)の41年記念行事を行なうことまで提案した。父・朴正熙大統領の業績再評価を願う朴槿恵大統領の自尊心をくすぐる提案であった。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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