エジプト「8.14事件」を読むための7つのポイント

池内恵
執筆者:池内恵 2013年8月20日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

 クーデタで政権を掌握したエジプトの軍部・暫定政権が行なった、8月14日の座り込み・デモの武力弾圧は、エジプト内政だけでなく、中東地域や国際政治への影響が計りしれない。「エジプトの天安門事件」とも言うべきこの日の弾圧で生じた死者の数は、政府発表でも638人。「アラブの春」全体を通じて1日での死者数としては最大規模である。考え得る限り最悪の選択肢を取り続けている軍部、それにつき従い欧米メディアの批判に「逆ギレ」する暫定政権の文民閣僚たち、そして選挙に勝てないとなると民主的制度を放擲し、軍のクーデタを翼賛、「欧米はムスリム同胞団のテロリズムを支援している」という思い込みの激しい議論を得意げに展開する「リベラル派」のいずれにも、言葉を失ってしまう。エジプト社会の悪い面ばかりが全開になって露呈している感がある。

「脆弱な民主的制度を軍がクーデタで覆し、秩序を求めるエリートや、権力にすがる民衆が礼賛し、排除された反体制派は過激化して長期的に不安定化する」というのは、途上国の政治でよくあることだ、と言ってしまえばそれまでだが、エジプトの地政学的重要性を考えれば、この国の政治的激変と社会的混乱が及ぼす影響は日本にとっても極めて大きい。エジプトの重要性は「場所」と「人口」に由来するために、そう簡単に条件が変わることはない。厄介なこの国に世界は振り回され続ける。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
comment:1
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順